サッカーで膝が痛い時に考えること
サッカーは足をよく使うぶん、怪我などが多い競技です。接触などによる物理的な怪我以外にも体の疲労によっても痛みは起こります。そのような場合は、疲労を回復させたり、体の扱い方を修正する方法が必要になります。なぜ痛みが出たのかを明確にすれば、痛みへの対処や予防が可能です。今回は、そのような場合、観察、ケア、予防の3つの対処ついてご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
はじめに見るべき2つのポイント
痛みが出た時に、まず痛みの感じ方を観察します。その時に動くといたのか、何もしなくても痛むのかを確認します。この2つの痛み方を観察することで、なぜ痛いのかを鑑別できます。この鑑別というのは、セルフケアで対処してもいい痛みなのかを見極めることです。場合によっては整形外科などにかかる必要があるものもあるのです。特に、気をつける痛みは、何もしていなくても痛みを感じる場合です。
何もしていなくても痛む場合
一番気をつけなければいけないのは、何もしていなくても痛みがある場合です。これを「安静時痛」と言います。具体的には、炎症が強い場合や骨腫瘍など骨の病気が挙げられます。このような注意が必要な痛みは、痛みが変わらない、もしくは悪化するという傾向があります。鑑別するには、安静にしても痛みがある時には、整形外科へ受診してレントゲンをとります。そうすることで骨の異常があるかを確認できます。
動くと痛い場合
動くと痛みがある場合は、動かし方に問題があると考えます。炎症を伴っている場合もありますが、炎症が強い時は痛みの強さも大きいです。もし、動くと痛む場合には2つのことを確認します。1つは、どのように動くと痛みが出るのか。2つ目は、どの部分が痛むのかです。この2つを調べることによって、何が痛みを引き起こしたのかがわかります。場合によっては、痛みを感じる部分以外に原因があることもあります。
痛みの出方を確認する
痛みがある場合には、「痛みがどうすると起こるのか」そして「どんな部分に起こるのか」を確認します。そうすることで、何が痛みを起こしているのかが明確になります。
どうすると痛みを感じるかは、スポーツの動きだけでなく、立ち上がり、歩行、階段の上り下りなど日常の動きも観察します。日常の動きで痛みを感じる場合は、競技復帰までのリハビリを行う必要があります。
痛みを感じる部分によっては、理学検査を行い、どの組織に問題があるのかを特定していきます。骨腫瘍のような外科的な疾患でなくても、競技を続ける上で、精密検査が必要な場合があります。今からだがどうなっているかを把握することで、リハビリ計画や対処の仕方が異なります。安易な自己判断が怪我への復帰を遅らせますので、しっかりと技術や知識のある専門家に見てもらうことをお勧めいたします。
どこが痛いかをみる
痛みを感じた時に、どこが痛いのかを明確にします。一言で「膝が痛い」と言っても範囲が広いです。この場合は、マジックペンや指先で示すことでどこが痛いのかが明確になります。痛みを感じる部分のよっては、その原因が明確になります。
膝の上が痛い
膝の上が痛い時は、太ももの筋肉が傷んでいる場合が多いです。大腿四頭筋と言って、シュートをしたり、ステップで止まったりする時に負担のかかる部分です。
膝の外が痛い
膝の外側の痛みは、筋肉や靭帯を痛める場合が多いです。股関節の硬さや慢性疲労、長距離を走った後によく見られます。ランナーによく見られる症状から「ランナー膝」とも呼ばれます。正式名称は腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)と呼ばれるものです。
膝の裏が痛い
膝裏が痛い時は、膝窩筋と呼ばれる筋肉やハムストリングスと呼ばれるもも裏の筋肉を痛めると起こり易いです。他にも靭帯や半月板損傷の時に、コリを感じる部分でもあります。
膝の内側が痛い
膝の内側の痛みは、鵞足炎(がそくえん)と呼ばれるスポーツ障害でよく見られます。内ももの筋肉やもも裏の筋肉の疲労で起こり易いです。他にも靭帯損傷や半月板損傷でも見られます。
どんな動きで痛みが出るか
痛みを感じる部分が明確になれば、次は何が痛みを引き起こしているのかを調べます。座って膝を伸ばす、立って歩くなど膝にかかる負担を変えてみます。痛みには再現性があります。その部分に負担がかかることで痛みを感じます。
体の動かし方に問題があれば、痛みを感じる部分以外を変えていく必要があります。スポーツ中の動作以外にも、立つ、座る、歩くなど日常の動作も観察します。痛みを感じていなくても、左右差や不安定性などのアンバランスが出ることもあります。痛みを感じる前の違和感の段階で対処すると、それ以上悪化させることを防ぐことができます。
サッカーでよくある膝の痛み
サッカーでよくある痛みは以下の通りです。
筋肉の痛みから靭帯損傷など痛める部分によって対処の仕方が異なります。場合によっては病院へ受診すべきものもあります。オスグットシュラッター氏病、成長痛、鵞足炎、半月板損傷、十字靭帯損傷、腸脛靭帯炎、膝窩筋炎、肉離れなど様々な名称があります。痛みの発生機序や対処法も異なります。
歩くと痛い場合は慢性疲労「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」
腸脛靭帯炎は、膝の周りがぼんやり痛みます。体重をかける、膝を曲げるなどの動きで痛みやすいです。この腸脛靭帯炎は、股関節の硬さから膝に負担がかかり痛みが出ます。このような股関節の硬さは、疲労の蓄積によって起こります。サッカーの場合は、サイドステップで止まれない、動きが流れる、フィジカルが落ちるなどの変化が起こります。そのような予兆がある段階で気づくことができれば、痛みを感じる前に対処できます。
蹴って痛い場合は成長痛のオスグット
痛みを感じる場所が、脛の前がわというのが特徴です。ボコッと脛の前が膨らみます。身長がよく伸びる時に起こりやすいです。そのため、成長痛とも言われています。このオスグットは、骨の成長に対して筋肉の柔軟性が追いつかないために、骨を引っ張りすぎて剥離(はくり)します。そのためにボコッと膨らんで見えるのは、軟骨が骨から剥がれて浮いている状態です。その場合は、筋肉の柔らかさを保つことで痛みは減っていきます。
ステップで痛い、しゃがめない場合は半月板(はんげつばん)
膝の関節には、半月板というクッションがあります。このクッションが膝がねじれることで傷つくことがあります。傷ついたところが引っかかり、曲げ伸ばしができなくなる場合があります。これをロッキングと言います。頻繁に起こる場合は、病院で手術が必要になる場合があります。MRIなどで半月板の状態を見る、理学検査で膝の機能を確認するなどで、鑑別ができます。膝の捻挫で起こりやすい怪我の1つです。時には、膝に炎症が起こり水が溜まることで腫れてしまうことがあります。
膝が抜ける場合は捻挫
サッカーでは膝をひねる動きが多いです。スパイクで土や芝に足が固まった状態で反転すると、膝の捻挫を起こしやすいです。その時に、十字靭帯の捻挫を起こしやすいです。靭帯が伸びると膝崩れということが起こります。膝を後ろから崩されたように、急に力が抜ける状態です。また、程度によっては、階段の下りや振り向きで不安定になる場合があります。半月板や膝の内側の靭帯も痛めることがあります。
痛みを感じた時に温めるのか冷やすのか
痛みを感じた時には、その時に必要な処置行うことが大切です。応急処置としてはRICES(らいす)処置が有名です。Rest(安静)、Ice(アイス)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)これに加えてStabilization(固定)をライス処置と言います。怪我をした時の応急処置として行われます。その他にも、怪我の復帰やリハビリ段階で必要な処置があります。温熱療法、テーピング、マッサージなど様々な種類があります。
これらは、怪我の段階や体の状態に応じて使い分ける必要があります。怪我の種類によっては、優先順位が異なるものもあります。例えば、ももを打撲した時は、冷やす前に、ストレッチで筋肉を伸ばして固定した状態でアイシングを行います。その理由は、筋肉がしこりになってしまうのを防ぐ目的があります。膝のケアであっても、同じように適切な処置をすることで怪我の早期復帰が見込めます。
アイシングをすべきとき
痛めた直後は冷やすことが良いです。特に腫れがある、ズキズキ拍動する痛みがある場合は、冷やしましょう。Rest(安静)、Ice(アイス)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)これに加えてStabilization(固定)の順に行います。靭帯がゆるい場合は、無理に膝を曲げるのは禁忌です。痛んでしまった靭帯をさらに引き伸ばして損傷してしまうことがあるからです。なるべく怪我をして痛みが軽減する姿勢を取り安静にします。
テーピングをする時
テーピングは、ギプス固定よりも自由度のある固定です。靭帯損傷や骨折などは副肢と言って添え木など丈夫なもので固定します。テーピングを使用する時は、リハビリなどある程度、動けるようになってからが良いです。テーピングは目的によって様々な効果を発揮できます。皮膚が弱い場合には、保護するアンダーラップやクリームなどを使用します。
温める時
炎症が治り、組織の修復を促す場合は、温めるケアが有効です。筋肉のケアには有効です。また、血液のめぐりが悪いと、膝周りが疼く場合があります。関節は、血液循環の影響が著しい場所です。低気圧や冷えにより違和感を感じつ場合は、温めることで緩和することができます。
マッサージをする時
怪我をした直後から、復帰までにマッサージは有効です。しかし、痛みを感じる部分は、炎症が治まってから行います。怪我をしている時には、痛めた部分以外の場所をケアします。その理由は、痛めた場所をかばうために負担がかかりやすいのです。炎症が治まってきてからは、動く範囲を確保するためにマッサージや可動域訓練としても有効な手段となります。
痛みを起こさないための予防方法
怪我は、直接ぶつけるなどの衝撃以外にも、体の扱い方や疲労の蓄積によっても起こります。痛みは体のサインです。この痛みを感じる前に動きにくさや体の重さを感じる時にケアをします。そうすることで、膝のみに負担がかかることを防ぐことができます。
今回の記事のまとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
サッカーにおいては、足にかかる負担が多い競技です。特に膝には慢性的な疲労が蓄積します。この疲労の蓄積が大きな怪我の原因にもなります。体は思ったように動かせないと怪我をします。感覚のズレをなくすことが怪我の予防に繋がります。